おいしいと喜ばれるミキサー食の作り方|味・彩り・安全性を高めるポイント

おいしいと喜ばれるミキサー食の作り方|味・彩り・安全性を高めるポイント

年齢を重ねると、噛む力や飲み込む力が弱まることから、誤嚥や窒息のリスクが高まります。そんなときに役立つのが、安全に栄養を摂取できる「ミキサー食」です。

しかし、ミキサー食を提供する際に「調理スタッフによってとろみの付け方にばらつきがある」「見た目が悪く、利用者が食べるのを嫌がる」といった課題を抱えている施設様も多いのではないでしょうか。

この記事では、ミキサー食の安全な作り方と適切な粘度の調整方法、そして利用者の「食べる喜び」を守るための工夫を詳しく解説します。

そもそもミキサー食とは?

ミキサー食とは、食材をミキサーにかけてペースト状にした食事のことです。

噛む力や飲み込む力が低下した高齢者でも、安全に栄養を摂取できるよう工夫された介護食の一種で、家庭や医療・福祉施設で幅広く採用されています。

ミキサー食は、ポタージュスープのようななめらかな状態が特徴です。食材の形がなくなるまでミキサーで撹拌するため、ほとんど噛まずに飲み込むことができます。水分が多く液体に近い状態の場合は、誤嚥を防ぐために、とろみ剤を加えて粘度を調整します。

よく混同されがちな介護食として、ペースト食やムース食があります。ペースト食はミキサー食よりも水分量が少なく、粘度が高い食事です。ムース食は、ゼラチンやとろみ剤を使って形を整えた食事で、見た目の華やかさが特徴です。

こちらの記事では、介護食の種類と選び方について解説しています。調理のコツや介助方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

ミキサー食のメリット

ミキサー食には、噛む力や飲み込む力が低下した方にとって、大きなメリットがあります。ここでは、ミキサー食のメリットについて紹介します。

噛む力や飲み込む力が落ちている人でも食べやすい

ミキサー食の最大のメリットは、咀嚼や嚥下の機能が低下していても食べやすいという点です。食材をペースト状にしているため噛む必要がほとんどなく、食事中の疲労感を減らし、食べる意欲を保ちやすくなります。

また、食べ物が気管に入ってしまう誤嚥や、喉に詰まる窒息のリスクも大幅に減らすことができます。

栄養分の吸収効率がよい

ミキサー食は、すでに食材が細かく砕かれているため、消化器官への負担が少ないという特徴があります。体力が低下した高齢者にとって、消化に必要なエネルギーを最小限に抑えられるのは大きなメリットです。

スムーズに栄養を吸収し、エネルギーとして活用できるため、低栄養状態を防ぐ効果も期待できます。

ミキサー食のデメリット

メリットがある一方で、ミキサー食にはいくつかのデメリットも存在します。

見た目が良くない

ミキサー食の最大の課題は、食材の原型がなくなり、見た目が単調になってしまうことです。

何の食材かわからない状態で提供されると、利用者は「何を食べさせられているのかわからない」という不安を感じます。この不安は食欲の減退につながり、利用者の「食事は楽しみ」という気持ちが損なわれるリスクがあります。

水分量が多いため低栄養に陥るリスクがある

ミキサー食は、食材をなめらかにするために水分を多く加えます。その結果、食事全体のかさが増えてしまいます。

小食な高齢者の場合、かさが増えた食事を食べきれず、結果的に必要な栄養を摂取できなくなる恐れがあります。水分でお腹がいっぱいになり、肝心のタンパク質やエネルギーが不足する低栄養状態に陥るリスクがあるのです。

粘度が適切でないと誤嚥の危険性がある

ミキサー食の粘度調整は、安全性に直結する重要なポイントです。粘度が強すぎると、食材が喉に張り付いてしまい、飲み込むことが困難になります。一方で、水分が多すぎると口の中でまとまらず、誤嚥しやすくなります。

施設では、調理スタッフによってとろみの付け方にばらつきが出やすく「今日の食事はむせやすい」といった指摘を受けることもあるでしょう。適切な粘度を保つには、明確な基準とスタッフ間での共有が不可欠です。

ミキサー食の作り方とポイント

ここからは、ミキサー食の具体的な作り方と、安全でおいしく作るためのポイントを解説します。現場のスタッフでも再現できるよう、具体的な手順と注意点を詳しくまとめました。

ミキサー食作りの基本的な手順

ミキサー食は、次の4つのステップで作ります。

  1. 加熱して柔らかくする
    野菜・肉・魚などの食材を十分に加熱し、しっかり柔らかくします。
  2. ミキサーにかける
    柔らかくなった食材をミキサーにかけ、なめらかになるまで撹拌します。複数の食材を一度にかけると色や味が混ざってしまうため、基本は一品ずつ別々に処理するのがポイントです。
  3. 水分を加えて濃度調整
    水・出汁・スープなどを加えて粘度を整えます。適度なとろみをつけることで、飲み込みやすさが大きく向上します。
  4. 味を整える
    最後に調味料で風味を調え、食べやすく仕上げます。

とろみの付け方

ミキサー食の粘度は、ポタージュスープ程度を目安にします。スプーンですくってたらしたときに、ぽたっぽたっとしずく型が残り、すぐに消えるくらいの状態が理想です。

とろみをつける方法として、片栗粉や葛粉を使う方法もありますが、加熱が必要で、時間が経つと粘度が変わりやすいという欠点があります。現場での再現性を高めるには、市販のとろみ剤の使用が推奨されます。

とろみ剤はメーカーによって固まるまでの時間が異なるため、様子を見ながら少量ずつ足していくのがコツです。

ミキサー食で主食を作るときのポイント

主食であるお粥をミキサー食にする場合、お粥をミキサーにかけ、重湯で硬さを調整します。とくに注意が必要なのは、ご飯やパンなどのデンプン質が主体の食材です。これらはミキサーにかけると粘り気が強くなり、かえって飲み込みにくくなることがあります。

ミキサーにかける前に、十分に水分を吸わせておくことが失敗を防ぐポイントです。

ミキサー食で主菜や副菜を作るときのポイント

主菜や副菜をミキサー食にする際は、汁気のない料理にだし汁を加えて粘度を出すことが大切です。

肉じゃがやシチューなど、もともと汁気のある煮物は比較的ミキサーにかけやすいですが、焼き魚や蒸し鶏など汁気が少ない料理は、適度にだし汁を加え、食材の形がなくなるまでしっかり混ぜましょう。

また、脂肪分が少ない赤身肉や白身魚は、滑らかさが出にくい食材です。こうした食材には、生クリームやバターなどの脂肪分を加えることをおすすめします。舌触りが滑らかになるだけでなく、エネルギーアップにもつながります。

ミキサー食でデザートを作るときのポイント

デザートは、利用者にとって食後の楽しみであると同時に、栄養補給の大切な機会でもあります。

果物を使う場合は、やわらかく熟したバナナならつぶすだけで食べられます。桃など繊維が多い果物は、コンポートにしてからミキサーにかけると、口当たりがなめらかになります。

また、乳製品も取り入れるとバリエーションが広がります。ヨーグルトはそのままでも食べやすく、はちみつを加えたり果物と一緒にミキサーにかけてスムージーにしたりするのもおすすめです。

デザートを上手に活用すれば、楽しみを提供するだけでなく、カロリー補給や水分摂取を助け、低栄養の予防にもつながります。

もっと喜ばれる!ミキサー食を作るための工夫

基本的な作り方を押さえたら、次は利用者に喜んでもらうための工夫を取り入れましょう。

ミキサーで撹拌しやすい食材を選ぶ

ミキサー食を作る際は、誤嚥のリスクが少ない食材を選ぶことが大切です。

不向きな食材としては、次のようなものがあります。

  • 弾力のある食材:こんにゃく、きのこ、イカ、タコなど
  • 繊維質の多い野菜:ごぼう、たけのこ、セロリなど
  • 粒が残りやすい食材:もち米、ナッツ類

これらはミキサーにかけても口の中に残りやすく、誤嚥の原因になりやすいので避けましょう。

一方、ミキサー食に適しているのは次のような食材です。

  • 葉物野菜のやわらかい部分(例:ほうれん草の穂先)
  • デンプン質の多い食材(イモ類、そら豆など)
  • 加熱して柔らかくした根菜(大根、人参などの煮物)

また、肉を使う場合は、脂肪分の少ない赤身肉はなめらかさが出にくいため、脂肪分が多い部位やひき肉を選ぶとよいでしょう。

味付けと彩りにもこだわる

ミキサー食は、水分を加えて混ぜるため、どうしても味が薄くなりがちです。そこで、加える水分を水や出汁だけでなく、料理の煮汁やスープを活用しましょう。たとえば、牛丼なら煮汁を、チャーハンならコンソメスープを加えると、しっかりした味わいに仕上がります。

また、見た目の彩りも食欲に大きく影響します。食材は一品ずつ別々にミキサーにかけることで色が混ざらず、鮮やかさを保てます。

緑(ほうれん草・ブロッコリー)、赤(トマト・パプリカ)、黄(かぼちゃ・人参)などをバランスよく使い、盛り付けの際に彩りを意識すると、食べる楽しみがぐっと広がります。

調理の手間・品質のばらつきを解決!談らんの給食システム

ここまで紹介したように、ミキサー食は安全で食べやすい反面、手作りには多くの手間がかかります。食材ごとにミキサーにかける工程、とろみの調整、彩りの工夫、そして何より、調理スタッフごとの仕上がりの差をなくすのは簡単ではありません。

その課題を解決するのが「談らん」の給食システムです。談らんでは、ソフト食・ミキサー食・ゼリー食といった嚥下食に幅広く対応しています。料理は副菜やお味噌汁までセットになっており、提供時には温めて盛り付けるだけで美味しく仕上がります。

また、味と品質を守るために必ず複数人で試食を行い、少しでも味にばらつきがあれば作り直しています。素材の風味を損なわないように酸化防止剤は使用せず、もっとも美味しい状態を保てるチルド保存を採用しています。

また、真空調理によってパウチの中で料理を完成させるため、食中毒のリスクを極めて低く抑えることができ、配送時にも徹底した温度管理を行っています。安全性と効率性の両面に優れた「談らん」の給食システムをぜひご検討ください。

まとめ

ミキサー食は、噛む力や飲み込む力が低下した高齢者にとって、安全に栄養を摂取するための欠かせない食事形態です。適切な粘度の調整や食材選び、味付けや彩りの工夫によって、利用者にとって「食べる喜び」を支えることができます。

しかし、施設で毎日安定した品質のミキサー食を提供し続けるのは簡単ではありません。調理の手間やスタッフごとの仕上がりの差といった課題も避けられないのが現実です。

そこで選択肢となるのが、外部の給食サービスの活用です。嚥下食対応に強みがある「談らん」のクックチル方式なら、安全で美味しいミキサー食を安定して提供できます。

「毎日の調理に限界を感じている…」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

談らんでは、老人ホームや介護施設に関する相談を受け付けております。お困りの際にはぜひお問い合わせください。

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