高齢者が摂るべき栄養は?目安の食事量や低栄養にならないための対策を解説
高齢者施設では「入居者の食が細くなってきた」「低栄養や残食を防ぎたい」といった声が少なくありません。しかし、毎日の献立作成や調理には大きな手間がかかり、人手不足のなかで十分な栄養管理を続けるのは簡単ではありません。
この記事では、高齢者が摂るべき栄養素や1日の食事量の目安から、低栄養の原因・症状、施設でできる具体的な対策までをわかりやすく解説します。
高齢者が摂るべき栄養素
高齢になると筋肉量や骨量が減少しやすくなり、活動量も変化します。そのため、食事の量や内容を見直し、必要な栄養を確保することが大切です。特に、健康な体を維持するためには、必要なエネルギーを確保するとともに、たんぱく質を十分に摂ることが重要です。
エネルギー
エネルギーは、生命活動や日々の生活を支えるために欠かせません。呼吸や体温調節など、じっとしているときにも消費されるため、私たちは常にエネルギーを必要としています。エネルギーの主なもとは、ごはん・パン・麺類などの主食と、油脂類です。
エネルギーの摂取量が消費量を下回る状態が続くと、体重が減少します。高齢者は食が細くなることもありますが、食事量を減らしすぎないよう、必要なエネルギーを確保することが大切です。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」
たんぱく質
たんぱく質は、筋肉や皮膚、内臓をつくり、免疫機能を維持するために欠かせない栄養素です。不足すると筋肉量の減少が進み、低栄養の大きな要因となります。
たんぱく質は、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などに多く含まれています。一度にたくさん食べるのが難しい高齢者ほど、1食に偏らせず、朝・昼・夕の毎食にバランスよく取り入れることが大切です。卵や豆腐、牛乳などは比較的食べやすく、噛む力や飲み込む力が落ちてきた方の補給源としても役立ちます。
これらに加えて、カルシウムやビタミン、ミネラルも組み合わせると、体の調子を整えやすくなります。
高齢者が1日で摂るべき食事量の目安
必要な栄養がわかったら、次に気になるのが「1日にどれくらい食べればよいのか」という量の目安です。ここでは、公的な基準に基づく数値と、それを満たすための現実的な献立の考え方を紹介します。施設に入居する高齢者の中心となる、75歳以上で身体活動レベルが「低い」から「ふつう」の方を想定して見ていきましょう。
1日で必要なエネルギー量とたんぱく質量の目安
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、年齢・性別・身体活動レベルごとに1日の推定エネルギー必要量が示されています。
75歳以上で身体活動レベルが「低い」場合の目安は、男性で約1,850kcal、女性で約1,450kcalです。活動量が「ふつう」の場合は、男性約2,250kcal、女性約1,750kcalが目安となります。65〜74歳では、身体活動レベルが「低い」場合、男性約2,100kcal・女性約1,650kcal、「ふつう」の場合、男性約2,350kcal・女性約1,850kcalとされています。
たんぱく質は、推奨量が65歳以上の男性で60g、女性で50gです。総エネルギーに占める割合は、15〜20%を目標量とすることが示されています。また、やせすぎや太りすぎを防ぐ目安として、65歳以上が目標とするBMIは21.5〜24.9とされています。ただし、この範囲は参考であり、一人ひとりの体調や持病に応じて調整することが大切です。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」
栄養が充実している献立例
必要な栄養量を満たすには、1日3回の食事でバランスよく栄養を摂ることが基本です。ここで気を付けたいのは、品数や彩りが乏しくなると食欲が落ち、結果として摂取量が減ってしまう点です。
たとえば1日の献立は、次のように組み立てられます。
朝食:ごはん、卵焼き、ほうれん草のおひたし、豆腐の味噌汁、ヨーグルト
昼食:ごはん、鶏肉と野菜の煮物、豆腐と海藻のサラダ、すまし汁、果物
夕食:ごはん、鮭の塩焼き、だし巻き玉子、かぼちゃの煮物、味噌汁
どの食事にも卵・魚・肉・大豆製品・乳製品のいずれかを入れると、たんぱく質が1食に偏りません。
施設で提供する食事では、主食・主菜・副菜・汁物を組み合わせ、必要なエネルギーやたんぱく質、ビタミン・ミネラルなどを確保できる献立を考えることが大切です。利用者の状態に応じて品目や量を調整することで、必要な栄養を摂取しやすくなります。
また、食事だけで必要な栄養を確保しにくい方には、午前や午後の補食(間食)に乳製品や果物を取り入れる方法も有効です。1回の食事で無理に量を増やすのではなく、少量を回数に分けて積み上げていく工夫が、低栄養の予防につながります。
高齢者の食事で気を付けること|食べない・飲み込めないへの対処法
高齢者が低栄養になりやすい原因
施設で栄養管理を考えるうえでは、高齢期の食事に対して多くの人がどのような不安を抱いているかを知っておくことも大切です。
株式會社談と株式会社NEXER Groupが、全国の男女500名を対象に実施した「高齢期の食事に対する意識と不安」に関するインターネット調査(2026年5月27日~6月3日)では、高齢期の食事について52.0%の人が「不安に思う」と回答しました。最も不安に感じる事柄は「噛む力・飲み込む力の低下」で、42.8%と最多でした。次いで「毎日の食事準備の手間・負担」が17.0%、「栄養バランスの偏り」が12.2%と続きます。
回答理由には「噛む力が弱くなると誤嚥が多くなりそうだから」「体力・気力ともに落ちてきて、料理をするのがとても煩わしく感じそうだからです」といった声がありました。回答者は高齢期を迎える前の世代を含む一般の方ですが、不安が噛む力・飲み込む力、食事の準備、栄養バランスに集中していることがわかります。
こうした声をふまえ、高齢者の立場になって食事の改善方法を考えると、より効果的な食事を提供できるでしょう。では、高齢者はなぜ低栄養になりやすいのでしょうか。主な原因を、身体・社会・精神の3つの側面から見ていきます。
アンケート引用:高齢期の食事、約52%が「不安に思う」と回答。不安なことは「噛む力・飲み込む力の低下」「毎日の食事準備の手間・負担」「栄養バランスの偏り」が上位に
出典:厚生労働省「おいしく食べて低栄養予防!(地域がいきいき 集まろう!通いの場)」
身体的原因
加齢によって、まず咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)の機能が低下します。硬いものが噛みにくくなったり、飲み込みにくくなったりすると、食べられるものが限られ、食事量そのものも減っていきます。
また、下痢や便秘といった消化吸収機能の不調から食欲が落ち、1日3食が2食に減ることもあります。味覚が鈍くなることや、筋力の低下で活動量が減り、食欲がわきにくくなることも、低栄養につながる要因です。
社会的原因
身体面だけでなく、生活環境も食事の質に影響します。独居や社会的孤立で閉じこもりがちになると、買い物に出かける回数が減ります。
近くに生鮮食品店がない、経済的にゆとりがないといった事情があると、保存しやすい菓子パンやレトルト食品、即席麺などに偏りやすくなります。高齢者夫婦だけの世帯や独居世帯での孤食も、低栄養の一因です。
精神的原因
環境の変化によるストレスも、食欲を左右します。住み慣れた自宅から施設へ移ったあとなどは、心理的な負担から食が進まなくなることがあります。さらに、認知機能の低下によって食べること自体を忘れてしまったり、抑うつ傾向から食への関心が薄れてしまったりすることもあります。
身体・社会・精神のそれぞれの要因は単独ではなく、重なり合って低栄養を招く点にも注意が必要です。
高齢者が低栄養になると引き起こされる症状
低栄養は、ある日突然起こるものではなく、日々の小さな変化として現れます。施設の職員が早い段階でサインに気づければ、食事の改善へとつなげやすくなります。ここでは、観察のポイントとなる症状を整理します。
低栄養の場合に見られる症状
低栄養のサインとしてまず挙げられるのが、意図しない体重の減少です。あわせて、骨格筋量が減ることで足腰が弱り、歩行や立ち上がりが不安定になります。
また、傷や褥瘡(じょくそう/床ずれ)が治りにくくなる、免疫力が下がって感染症にかかりやすくなる、むくみが見られる、といった変化も低栄養を疑うポイントです。食事量が減っている入居者がいれば、これらの症状がないかを日頃から観察するとよいでしょう。
低栄養と脱水の両方で見られる症状
低栄養が進むと、脱水の症状が重なることもあります。食事量が減ると、水分の摂取量も同時に減るためです。
食欲の低下や口の中の乾燥、皮膚の弾力の低下、唾液の粘りなどは、低栄養や脱水が疑われるサインです。当てはまる入居者がいれば、食事量とあわせて水分量も確認しましょう。
高齢者が低栄養にならないために高齢者施設でできること
ここまで見てきた原因や症状をふまえ、高齢者施設で実践できる対策を考えていきます。家庭での工夫とは異なり、施設では多くの入居者に継続して提供できる仕組みづくりが欠かせません。
食べやすさの工夫をする
まず取り組みたいのが、入居者一人ひとりの嚥下・咀嚼レベルに合わせた食事形態の調整です。食材を細かく刻む、柔らかく煮込む、とろみを付けるといった工夫に加え、ソフト食・ミキサー食・ゼリー食といった形態を取り入れることで、安全に食べられる範囲が広がります。
また、柔らかくしたり刻んだりするだけでは見た目が損なわれ、食欲の低下を招くこともあります。食べやすさと見た目のよさを両立できれば、入居者が食事を楽しむ気持ちの維持にもつながります。
ただし、調理方法が増えるほど、現場の負担は大きくなっていきます。これらを施設の厨房ですべて個別に調理するのは、仕込みの手間や人件費の面で限界があるのも事実です。
調理が難しい場合は給食委託も検討する
厨房の負担を抑えながら安定した栄養提供を続けるなら、施設向けの配食サービス(クックチル方式)の活用も選択肢の一つです。談らんは、完調品(完全調理済み冷蔵(チルド)食品)として、主菜・副菜・味噌汁の具材などをセットでお届けしています。
主菜や副菜は湯煎などで温めて盛り付けるだけで提供でき、ゼリー食は温めずにそのままお出しできます。主食は施設側でご用意いただき、栄養バランスの要となるおかずを無理なく充実させられます。
談らんの完調品は、複数名による試食で味のブレを防いでいます。また、食品ロスの削減や人件費の抑制、ソフト食・ミキサー食・ゼリー食といった嚥下レベルに応じた対応のしやすさも、現場で感じていただけるメリットです。
まとめ
高齢者の低栄養を防ぎ、健康で心豊かな毎日を支えるには、適切なエネルギーとたんぱく質の確保、そして安全でおいしい食事を無理なく提供し続けられる仕組みが欠かせません。原因と症状を知り、入居者に合わせた食事形態を整えることが、その第一歩となります。
談らんでは、施設さまの厨房負担を最小限に抑えながら、家庭的で栄養バランスの取れたお食事(基本食・嚥下食)をお届けしています。献立づくりや調理の負担にお悩みでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。まずは無料試食セットで、談らんの味をお確かめいただけますとうれしいです。
